2016年児童福祉法が改正された。すべての児童は、適切に養育される権利を有するとして、家庭養育を前提とするもののそれが困難である場合は、児童が「家庭における養育環境と同様の養育環境」において継続的に養育されるよう、国及び地方公共団体は必要な措置を講ずることとしている。厚生労働省は、主要諸国と比較して著しく低いわが国の里親等委託率を短期間で高めようとしている。 この論文の研究目的は、里親拡充ための方策を明らかにして、現実的で戦略的な提案をおこなうことである。研究の方法は以下のとおりである。①既存研究のサーベイにより、そもそもなぜ施設ではなく、里親が必要なのかを明らかにする。②なぜ日本では里親が少ないのか、またどのようにすれば里親を増やすことができるのかを、厚生労働省の資料を中心に国の考えを整理する。③里親委託率を基準に事例を2つピックアップし、児童相談所と関連団体を調査、比較分析することにより、里親委託率を高める要因をさぐる。 事例研究からえられた示唆点は、市民への普及啓発、里親リクルート、里親支援のいずれにおいても専門的な里親支援機関の存在が欠かせないこと、と同時に活動には現に里子を受託している里親の協力が必要であることから、里親支援機関と里親および里親会は信頼関係と協力関係を構築することが必要であること、さらに、こうした信頼関係を構築する際に前提になるのが、里親の困り感を解消できるように、支援機関側の十分な経験に基づいた傾聴や専門的アドバイスが必要であること等であった。 里親支援機関の中には専門性は高いが、里親経験を持たないところもある。そうした、里親支援機関は、地域のベテラン里親を相談員として任用することで、不足する資源をカバーできる。 多く人々の協力により、すべての里親家庭が里子とともに将来にわたって希望に溢れる暮らができることを心より願っている。
キーワード: 社会的養護、児童相談所、里親、愛着形成、秋葉原事件
Key words: social nursing , child consultation center , foster parents , attachment formation , Akihabara incident